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2012年1月11日
聞き屋与平(宇江佐真理)
夜更けより少し早い時刻に、深編み笠をかぶり、商家の通用口から与平は現れる。彼は「お話、聞きます」の看板を掲げ、いろいろな人から話を聞く。大店の隠居である与平はなぜ聞き屋になったのか?そこには意外な真実が隠されていた・・・。6編を収録。
愚痴や不満、過去の過ち。だれかに聞かせることにより、人は気持ちを軽くする。聞き料もそれほど要求せず、与平はひたすら話に耳を傾ける。人は、さまざまなしがらみを抱えてながら必死で生きている。与平に切々と語る人たちの人生も悲哀に満ちている方が多い。だが、まだ誰かに聞いてもらえるだけいいのかもしれない。与平自身が心の中に抱えるものは、誰にも言えないものなのだ。ひとりで背負うにはつらく哀しいものなのだが。自分の話を聞いてもらいたいと一番強く願っていたのは与平自身だったのではないだろうか。聞き屋になり人の話を聞くことで、彼は少しは救われたのか?おのれの人生に光を見出すことができたのか・・・?おだやかな感動が残る作品だった。
ゆこりん : 15:24 | 作者別・・うえざまり