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2012年1月 3日

ツナグ(辻村深月)


「あなたなら誰に会いたいですか?」
そう聞かれたとき、いったい誰を思い浮かべるだろうか?たった一度だけ、死者と生者を会わせてくれる人がいる。その人は、「ツナグ」と呼ばれていた・・・。

アイドルに、母に、親友に、そして婚約者に・・・。「逝ってしまった人にもう一度会って話がしたい。」そういう想いから、人は「ツナグ」を探し求める。はたして、逝ってしまった人に会うことがその人にとっていいことなのか・・・。会ってよかったと思うこともあるが、会わずにいたほうがよかったと思うこともある。苦しみから逃れようとしたはずなのに、かえって苦しみを増す場合もある。読んでいて、たまらなく切ない。私にも会いたい人はいる。だが、私なら会わないだろう。生と死の間に引かれた線は、そのままにしておいたほうがいいと思うから。喪った悲しみに再び心が覆われるのは耐えられない。
全体的に透明感があり、切なさをふんわりとしたやさしさの中に包み込んだような雰囲気を持っている。生と死を、独特の瑞々しい感性で見事に描きあげた、読み応えのある作品だった。

ゆこりん : 17:44 | 作者別・・つじむらみづき