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2011年4月15日

今日を刻む時計(宇江佐真理)


火事で家を失った伊三次とお文は10年後、伊与太のほかにお吉という娘を授かっていた。彼らの気がかりは、息子伊与太の行く末だった。一方、不破龍之進は自分の母親のことで悩み、芸妓屋に入り浸っていた。自分の進む道を模索する龍之進・・・。表題作「時を刻む時計」を含む6編を収録。髪結い伊三次捕物余話シリーズ9。

読んで驚いたのは、前作から10年の月日が流れていたことだった。伊三次も40代になり、龍之進も20代後半になっていた。あまりにも月日が飛びすぎではないのかと思ったが、内容は読み応えがあった。月日は人を成長させるが、同時に老いさせていく。伊三次、お文、不破友之進などは、読んでいて「ずいぶん年を重ねた・・・。」としみじみ思った。一方で、八丁堀純情派と呼ばれた龍之進などの成長には目を見張るものがあった。確実に世代交代が来ようとしていることを強く感じる。また、家族愛や親子愛もしっとりと描かれているので、温もりも感じた。人情味あふれる心に染み入る作品だった

ゆこりん : 18:58 | 作者別・・うえざまり