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2011年4月19日

ぼくが愛したゴウスト(打海文三)


約束していた友だちが来ずひとりでコンサートに行った翔太は、帰りに駅で人身事故に遭遇する。そのときから彼は、自分のいる環境に違和感を抱き始める。いったい自分のいる世界は、今まで過ごしてきた世界と同じなのか?しだいに見えてきた現実を目の当たりにしたときに、彼の取った行動は・・・。

同じようでどこか微妙に違う世界。そこに迷い込んだ11歳の少年。不安、恐れ、とまどい、悲しみなど、彼を襲うさまざまな感情がきめ細かく描かれていて、読み手にも翔太の心情がしっかりと伝わってくる。読んでいてやりきれない思いや切なさを強く感じた。「パラレルワールド」を題材にしているが、独特の感性で描かれていて斬新だと思う。けれど、「彼はどうしてもうひとつの世界に紛れ込んでしまったのか?」「彼はもとの世界に戻れるのか?」という読み始めからずっと抱いていた疑問への答えは曖昧さを残し、個人的には納得できるものではなかった。読後満たされない思いが残ったが、「自分がいる世界はいつもと同じ世界なのか?」「はたして自分は本当に存在しているのか?」そう思いながら余韻に浸るのは楽しかった。

ゆこりん : 20:08 | 作者別・・う他