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2010年6月21日

掏摸(中村文則)


天才スリ師の西村は、かつて一度だけ一緒に仕事をした「最悪の男」と呼ばれる木崎と再会する。木崎は、再び彼に仕事を強要する。与えられた三つの仕事を期日までにこなさなければ明日はない。天才スリ師の腕は、おのれ自身を救えるのだろうか・・・。

読んでいて、黒くドロドロしたものを感じる。登場する人物全てが救いのない環境に置かれている。はい上がりたくてもはい上がれない。その絶望的な状況に、読んでいて暗い気持ちになる。主人公と最悪の男木崎。仕事を強要する者される者。危うい関係はいったいどうなるのか?ラストまで一気に読ませる面白さはある。ただ、登場人物ひとりひとりの描写が希薄なため、具体的なイメージがなかなか浮かんでこないのが残念だった。ラストは余韻を残すものになっているが、こういうパターンは何度か見たことがあるので斬新さは感じられなかった。作者の意図も分かりづらく、曖昧な印象を受ける作品だった。

ゆこりん : 20:12 | 作者別・・な