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2010年6月14日

ひょうたん(宇江佐真理)


父親が倒れ、鳳来堂という古道具屋を継いだ音松だったが、商売に身が入らず博奕ばかりしていて店を傾かせてしまう。そんな時、将来を誓い合った男に裏切られた傷心のお鈴と知り合い、ふたりは所帯を持つ。ある日、音松は橋から身投げしようとする男を助け、家に連れ帰った。その男の抱える事情とは?表題作を含む6編を収録。

どの話も江戸を舞台にした、人情味あふれる話である。「ひょうたん」や「織部の茶碗」のように、地道な商売を続ける音松・お鈴の真面目な人柄を描いた心温まる話もあるが、「びいどろ玉簪」のように、心がしめつけられるような話もある。虐待される子供たち。そして、哀れな行く末。現代にも通じるとても切ない話だった。「貧乏徳利」にはラストで泣かされた。音松とその友人たちとの固い友情は、どんな状況になっても決して変わることなく続いていくだろう。ひとつひとつの話に味わいがあり、しかも、6編はひとつにしっかりとまとまっている。面白い作品だと思う。それにしても・・・。作中でお鈴が作る料理は、とてもおいしそうだ。一度でいいから味わってみたいものだ。

ゆこりん : 17:43 | 作者別・・うえざまり