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2010年5月29日

ひとつ灯せ(宇江佐真理)


息子に家業を譲り隠居した清兵衛を襲ったのは、死の恐怖だった。そんな清兵衛を見て、友人の勘助はある集まりに清兵衛を誘った。本当にあった怖い話を語り合う「話の会」に顔を出すうちに、やがて奇妙なできごとが起こり始める・・・。8つの作品を収録。

読んでいてじわじわと怖さが迫ってくる感じがした。話の会に参加する者たちは、それが本当なのか、または人の心の弱さが作り出す幻想なのか、判断できないまま語り手の話に耳を傾けている。だが、理屈では説明しきれない奇怪なできごとが次々に起こってくる。読み手までもが、不思議な世界に引きずり込まれてしまう。「この話、作者はどう収めるつもりなのか?」背中がゾクゾクするような感覚を味わいながら読み進めた。だが、待っていたのは本当に意外なラストだった。「怨念」「たたり」そんなことは信じたくないが、その存在を完全に否定できないで恐れおののいている自分がいる・・・。少々、いやな余韻が残る作品だった。

ゆこりん : 15:09 | 作者別・・うえざまり