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2010年5月31日

小暮写眞館(宮部みゆき)


花菱英一の両親は、結婚20周年を機に念願のマイホームを購入する。その家は、もと写眞館だった築33年の怖ろしく古い家だった。「小暮写眞館」の看板をそのままにしていたため、ある日心霊写真が持ち込まれる。英一は、その謎解きに乗り出すが・・・。4編を収録。

心霊写真・・・。英一により、その写真に隠されたさまざまな人たちの思いが明らかになっていく。人それぞれ、いろいろな生き方がある。山あり谷あり。そんな人生が写真の中に凝縮されていて、読んでいて胸に迫るものがあった。そのほかにも、小暮写眞館の幽霊騒動の中で見えてきた英一の弟、ピカの苦しみにはホロリときた。「何気ないしぐさや言葉の中に、これほどの苦悩が秘められていたのか!」そう思うと、本当に切なかった。生と死についても、考えさせられた。
どの登場人物も性格や心情が細やかに描かれていて、作品を幅も深みもある魅力あるものにしている。700ページありとても長い作品だが、その長さには無駄がない。読後も、春風に吹かれているような心地よさが残った。心がほのぼのとする作品だった。

ゆこりん : 19:11 | 作者別・・みやべみゆき