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2010年3月10日

神様のカルテ(夏川草介)


「24時間、365日対応」
患者にとってはありがたい病院でも、そこで働く医師や看護師にとっては修羅場だ。「患者の生と死にどう向き合えばいいのか?」若き医師栗原一止は悩みながら、愛する妻や同僚、そして看護師らに支えられ、患者のために奔走するのだが・・・。

医師の仕事は本当に大変だ。特に地域医療では慢性的な医師不足で、満足な診療ができないところがたくさんある。一止が籍を置く本庄病院も例外ではない。医師も看護師も、ぎりぎりのところでがんばっている。人の生と死に関わる仕事の厳しさが、この作品から伝わってくる。一歩間違えば暗く重い話になってしまうのだが、作者の軽快な描写でかなり救われる部分がある。さまざまな人の生き方、さまざまな人の死に方がある。その中で印象に残ったのは、やはり安曇さんのことだ。これこそがまさに、現代医療が抱える問題だと思う。「どう生きて、どう死ぬのか?」このことは、自分自身がしっかりと考えなければならない。悲しくて、切なくて、そして、心温まる作品だった。

ゆこりん : 18:20 | 作者別・・な