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2010年3月16日

追想五断章(米澤穂信)


叔父が営む古本屋でアルバイトをしている菅生芳光は、店を訪ねて来た女性の依頼を報酬目当てで引き受ける。依頼主の北里可南子は、亡くなった父の書いた五つの結末のない小説を探していた。調べを進めていくうちに、芳光は22年前のある事件の存在を知る。事件の真相は?そして、五つの小説に隠された謎とは?

依頼主の可南子のもとにある、五つの一行だけの結末の文章。そして芳光が捜す五つの結末のない小説。全てが組み合わされたとき、そこから分かることは何なのか?作者がこの作品の中に仕掛けた謎にワクワクしながら読み進めた。作中の五つの小説は、本文と結末の組み合わせが22年前の事件の真相に結びついていくように、かなり計算されて書かれている。その仕掛けには、ただただ感心させられる。途中は「こうなのだ。」と思い込ませておいて、最後には意外な真相を用意しておく。作者にすっかりだまされてしまった。真相のインパクトの弱さ、主人公の芳光の今後などに多少の不満はあるが、全体的には面白い作品だと思う。

ゆこりん : 15:33 | 作者別・・よねざわほのぶ