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2010年3月 1日

君を乗せる舟(宇江佐真理)


2年前、金貸しの勾当が殺される事件があった。下手人は不破友之進の息子龍之進が通っていた塾の師匠だった。龍之進が事件の一部始終を目撃していたことで師匠は捕まったが、娘のあぐりがひとり残された。そのことに心を痛めていた龍之進だが、あぐりに悪の手が伸びようとしたとき、敢然と立ち上がる!表題作「君を乗せる舟」を含む5編を収録。髪結い伊三次捕物余話シリーズ6。

この作品の中で、不破の息子龍之進はいよいよ元服する。そして、世の中を騒がせている「本所無頼派」を捕らえようと、仲間と共に「八丁堀純情派」を結成して日夜駆けずり回っている。一人前になるにはまだまだ修行が足りないが、おのれの信念を貫こうとする姿は頼もしい。そんな龍之進の淡い恋心を描いた「君を乗せる舟」は、忘れていた遠い日のほろ苦さを思い出させる。このタイトルには、龍之進の切ない思いが込められている。彼は、確実に大人になっていく。また、伊三次の息子伊与太も日に日に成長していく。この作品を読んで、時が流れているのだとあらためて感じた。「本所無頼派」の件は解決するのか?新たな展開に、ますますこのシリーズから目が離せない。楽しめる作品だった。

ゆこりん : 17:23 | 作者別・・うえざまり