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2010年3月 3日

雨を見たか(宇江佐真理)


今まではただ単に世間を騒がせているだけだった「本所無頼派」が、人を殺めた。「八丁堀純情派」の6人は犯人探求に乗り出すが、彼らの前に権力の壁が立ちはだかる。一方伊三次は、伊与太の成長を楽しみにしている反面、成長していく不破龍之進との関係が微妙に変化していることに気づいて、複雑な思いを味わっていた・・・。表題作「雨を見たか」を含む6編を収録。髪結い伊三次捕物余話シリーズ7。

「このシリーズも世代交代か?」と思わせる内容だった。伊三次があまり活躍しない分、「八丁堀純情派」の面々が江戸の町を守るため奔走する。不破龍之進、緑川鉈五郎、春日多聞、西尾佐内、古川喜六、橋口譲之進、みな個性豊な人物ばかりだ。性格や考え方はまるで違うが、6人がひとつになったときは素晴らしい力を発揮する。だれひとりとして脱落することなく、このまま成長してほしい。ただ、読者のひとりとして、このまま脇役的な存在になってしまうとは思わないが、もともとの登場人物、伊三次、不破友之進、緑川平八郎らのさらなる活躍を期待したい。シリーズ6の時と同様、この作品では時の流れを強く感じる。できれば、本来持っている魅力を失うことなく、このシリーズがずっと続くことを願っている。

ゆこりん : 14:17 | 作者別・・うえざまり