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2010年1月22日

さんだらぼっち(宇江佐真理)


廻り髪結い伊三次の女房になったお文は、「さんだらぼっち」と呼ばれる木戸番の店で、ある父娘と知り合いになる。再会を約束したお文だったが、その父娘に悲劇が起こる・・・。表題作「さんだらぼっち」を含む5編を収録。髪結い伊三次捕物余話シリーズ4。

今回も作者は読ませる。これでもか、これでもかと・・・。「さんだらぼっち」は切ない反面、親子でもこういう関係になってしまうのかと思うと、やりきれない悲しさを感じた。「鬼の通る道」では、不破の息子龍之介の苦悩を切々と描いていて胸に迫るものがある。「爪紅」では、狂気とも思える男の異常さを描いている。また、この話の中で伊三次の過去のエピソードも語られていて、興味深かった。「ほがらほがらと照る陽射し」では、掏摸の直次郎の恋を描いている。直次郎はこのあとどうなるのか?気になって仕方がない。「時雨てよ」は、悲しみの底に沈んでしまったおみつの言葉が、お文をほろほろと泣かせる。その描写が、苦しくなるほど悲しい。この話では、伊三次に弟子ができる様子も描かれている。この先どうなるのか、それもとても楽しみだ。今回もしっとりとした味わいのある話ばかりだった。

ゆこりん : 17:49 | 作者別・・うえざまり