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2010年1月23日

満月(原田康子)


中秋の名月の夜、愛犬セタを連れ散歩に出たまりは、豊平川の川原で奇妙な男に出会う。杉坂小弥太重則と名乗る男は、300年前の江戸時代からタイムスリップしてきた武士だった。まりと小弥太の、不思議な関係が始まる・・・。

昭和50年代の札幌が舞台。その当時は私も札幌に住んでいたので、懐かしい気持ちで読んだ。300年の時を超えやってきた若者の目に、はたして札幌はどう映ったのか?まりやまりの祖母とのふれあいの中、小弥太はしだいに現代の生活になじんでいく。心の中では激しい葛藤や苦悩が渦巻いていただろう。妻子と別れなければならなかった寂しさもあっただろう。だが彼は、武士としての毅然とした態度を崩さない。まりは憎まれ口をききながら、そんな小弥太を温かく見守る。やがて、まりと小弥太との間に芽生える感情・・・。けれど、別れのときは刻一刻と迫る。ふたりがどんなに努力しても、「時間」という乗り越えられない壁があるのは悲しかった。読んでいて切なかったが、ほのぼのとした温もりも感じる作品だった。

ゆこりん : 16:10 | 作者別・・は他