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2009年8月28日

盤上の敵(北村薫)


妻友貴子を人質にして我が家に立てこもった殺人犯。しかも彼は猟銃を持っている。夫である末永純一は、警察には内緒で極秘に犯人と直接交渉する。はたして彼は、無事に妻を救出できるのか?ラストには、驚愕の真実が待っていた!!

この作品を読んだ感想をひとことで言うのなら「衝撃」だろう。本当に、これほど衝撃を受けた作品はあまりない。人質となっている妻をいかに無事に救出するか?孤軍奮闘する純一の妻を思う心には、胸を打たれる。だが、その裏に隠された真実には驚愕させられた。
何の理由もなく、人が人に対し憎悪をむき出しにする。「ただそこに存在する。」そんなことが憎悪の理由になる。こんな恐ろしいことがあるだろうか。「つらい、つらい、つらい。」読み進めるのがつらかった。ある人間の悪意が残酷なできごとを引き起こす。「どうしてここまでするのか?」読んでいて、怒りと同時に恐ろしさを感じる。その人間の残酷さはの象徴は、あとがきで作家の光原百合さんが述べているように、私も「第3部中盤戦第8章」の「蚊」の描写だと思う。状況を直接的に表現するより、この方が何倍も衝撃的だ。
作者がこの作品の冒頭で、「物語によって慰めを得たり、安らかな心を得たいという方には、このお話は不向きです。」と述べていることが、しだいに鋭い痛みを伴った実感となって迫ってくる。
そしてラスト・・・。人の悪意や残酷さと人質事件がどう結びついていくのか?真相が分かったときにはあ然とした。同時に、作品の中に巧みに張りめぐらされていた伏線に気づき驚いた。見事なストーリー展開だった。
はたしてこの後ふたりはどうなっていくのか?決して平坦な人生ではないと思うが、幸せになってほしいと願わずにはいられない。
ミステリーとしても、人間的なドラマとしても、読み応えのある作品だった。オススメです!!

ゆこりん : 19:48 | コメント (2) | 作者別・・きたむらかおる


コメント

 北村さんの作品で、今までに読んだのは「覆面作家シリーズ」とか「スキップ三部作(?)」と「野球の国のアリス」のような、読後感さわやかな感じのばかりなので、なんだか読むのこわいかも(^_^;)
 でも、読んでみたいなぁ。
 図書館で探してみます。

投稿者 翔ママ : 2009年9月 1日 13:36

>翔ママさん
この作品は、北村作品の中でも
異色かもしれないです。
でも、私は五つ星にしました(*^o^*)
さわやかとはいかないけれど、読む価値は
あると思うので、機会があればぜひ読んで
みてください。
もし読んだら、感想を聞かせてくださいね♪

投稿者 ゆこりん : 2009年9月 1日 15:46