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2008年10月23日

銀の匙(中勘助)


こわれた引き出しの中で忘れられていた銀の匙。それを見つけたとき、母はその由来を語ってくれた・・・。少年の日の思い出を瑞々しく描いた作品。

幼い頃病弱であった「私」は伯母に育てられた。銀の匙は、伯母が「私」に薬を飲ませるときに使ったものだった。「私」に対する伯母の限りない愛情、「私」の少年時代、当時の日常生活や学校の様子、子供の遊び、その他のさまざまなエピソード、そのどれもが生き生きと描かれていて、読んでいるとその光景が目に浮かぶようだった。明治から大正にかけて書かれた作品なのだが、どこか私が幼い頃を過ごした昭和30年代に通じるものがあり、郷愁を感じた。やわらかく心地よい文章と独特の感性で描かれたこの作品が、今なお多くの読者に支持されているのも分かるような気がした。

ゆこりん : 18:30 | 作者別・・な