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2008年1月19日
朝霧(北村薫)
昭和の初めの祖父の日記の中に、不思議な文字列が。漢字だけを並べたそれはいったい何を意味するのか?祖父の青春時代のほろ苦い出来事を描いた表題作「朝霧」を含む3編を収録。
円紫シリーズ。この作品では、「私」は大学を卒業して社会人になっている。前回の作品とは違って今回の作品には人の死というのは出てこない。そのことに、ほっとする。「朝霧」の中で語られる祖父と鈴ちゃんの話は、ちょっと切なかった。また、「山眠る」の中では父の娘への愛情を強く感じた。どの話もていねいに描かれていて、読んでいて心地よかった。このシリーズはこれで終わりなのだろうか?とても残念な気がする。今までずっとこのシリーズを読んできて、謎解きだけではなく「私」の成長も楽しみだった。できればまたいつの日か、円紫さんと「私」に会えることを願っている。
ゆこりん : 16:37 | 作者別・・きたむらかおる