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2008年1月18日

秋の花(北村薫)


幼い頃からいつも一緒だった真理子と利恵。その友情は高校生になっても変わることはなかった。だが、文化祭の準備中に真理子は屋上から転落し、帰らぬ人となる。残された利恵は魂の抜け殻のような状態に・・・。「真理子の死は事故なのか?自殺なのか?」気になった「私」は、円紫の力を借りて真相を突き止めようとするが・・・。

おなじみの円紫シリーズ。今回の話は、「私」の後輩にまつわる話だ。真理子と利恵、この二人の後輩は「夜の蝉」の中でもほんの少し顔を出す。今までも、そしてこれからも一緒だったはずの二人。だが、ある日突然二人の関係は断ち切られる。残った者と残された者。どうしてこんなことになってしまったのか?二人がどれほど仲がよかったのか、その深さを知れば知るほど読んでいてつらさが増していく。特に利恵の心中を思うと胸が痛い。人の命とはこんなに脆いときもあるのだ。「生と死」「いのち」、重いテーマを作者は見事に描いている。結末もよかった。「許すことはできなくても、救うことはできる。」このひと言の意味はとても大きいと思う。

ゆこりん : 15:35 | 作者別・・きたむらかおる