« 朝霧(北村薫) | メイン | ヒトラーの防具(帚木蓬生) »

2008年1月25日

虹色ほたる(川口雅幸)


1年前に交通事故で突然父を失ったユウタ。父との思い出の場所でかぶと虫をとろうと一人バスで山奥のダムにやってきたが、30年前にタイムスリップしてしまう。小学6年生のユウタの、不思議で感動的な夏休みが幕を開けた。

ダムに沈む前の村の豊かな自然、そこに暮らす人たちの様子が生き生きと描かれている。私が子供の頃は、こういう風景や光景はどこでも見られるものだった。だが、時代の流れがそれらを消してしまった。読んでいて懐かしさがこみ上げてくる。ユウタがそんな村で体験したのは、友情や、他人に対するいたわりや思いやりの心、そして、生きることの大切さや命の重さだった。父の死という悲しいできごとも、ユウタは彼なりに受け止め、乗り越えていこうとする。不思議な夏休みが一人の少年を成長させていく。その過程がとてもいい。文章の表現力不足を感じたが、読み心地もよく心温まる作品に仕上がっている。

ゆこりん : 14:41 | 作者別・・か他