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2008年1月12日
夜の蝉(北村薫)
姉は確かに、席が隣どおしの歌舞伎の券2枚のうちの1枚を手紙に入れ、ポストに投函した。送った相手は姉が思う男性三木。だが、歌舞伎にやってきたのは三木とつき合っている女性だった。女性は、三木が差出人になっている手紙を受け取ったという。三木がそんなことをするはずがない。姉の出した手紙はどうなってしまったのか?表題作を含む3編を収録。
おなじみの円紫シリーズ。江美ちゃんや正ちゃんとの友情や、「私」と姉との間に流れる温かなつながりが描かれ、3編どれも味わいがあった。特に表題作「夜の蝉」で語られる姉妹のエピソードは印象的だった。私にも妹がいて似たような経験がある。姉妹だからこそ意地になってしまう。喧嘩してしまう。そういうこともよくあった。今では笑い話だが。家族、友人、きょうだい・・・。人と人とのつながりって大切なのだと、改めて思う。読んでいて心地よさを感じる作品だった。
ゆこりん : 16:47 | 作者別・・きたむらかおる