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2007年11月 6日

六の宮の姫君(北村薫)


卒論のテーマに選んだのは芥川龍之介。彼の描いた作品「六の宮の姫君」は王朝物のはずだが、芥川はこの作品に対し「あれはキャッチボールだ。」という言葉を遺していた・・・。いったいこの言葉には何が隠されているのだろうか?

殺人事件など起こらない。探偵も刑事も登場しない。だが、この作品は立派なミステリーだ。ただし、異色中の異色だが。「六の宮の姫君」の作品に対して遺した芥川の言葉の真意は何か?交友関係のあった菊池寛らの作品や書簡、日記などから探られる真実。さまざまな資料が読まれ、検討され、芥川が関わりを持った人たちが浮かび上がってくる。その数々の事実は、本好きの人たちの心を間違いなくワクワクさせることだろう。同時に、作者の緻密な調査やその推理力に驚かされることだろう。本を好きな人にはぜひ一度は読んでもらいたい。文学の持つ魅力をあらためて感じることができる作品だった。

ゆこりん : 17:05 | 作者別・・きたむらかおる