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2004年2月27日

赤い月(なかにし礼)


希望に胸ふくらませ、渡ってきた満州。波子と勇太郎は、そこで新たに事業を起こす。だがある日突然、ソ連軍が進攻してくる。夫の不在の中、波子は子供たちを連れて逃亡を決意するが・・・。

夫がいても子供がいても、常に自由でありたいと願う波子。妻として、母として生きるよりも、女性として生きることを望んだ波子。戦争という悲惨な状況にありながら、おのれの信ずるままに行動する彼女の姿には、圧倒されるものがある。だが、そういう強い女性だからこそ、子供たちとともにあの満州での逃亡が出来たのではないか。作者の母親がモデルだというこの作品、波子の生き方には、ただ驚かされるばかりだ。
一方で、満州への移住政策ということについても考えさせられた。うまい話ばかりを聞かせ、多くの人を満州に送り込んだ。そして終戦の時、その人たちを捨てた。また中国の人たちにも、多大な犠牲を強いた。日本の犯した罪は、あまりにも大き過ぎる。

ゆこりん : 15:30 | 作者別・・な