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2014年5月27日

銀二貫(高田郁)


大阪天満の寒天問屋の主・和助は、仇討ちで父を殺された少年の命を銀二貫で買った。その少年鶴之輔は名を松吉と変え、商人として新たな人生を歩み始める。だが、彼の人生にはさまざまな困難が待ち構えていた・・・。

銀二貫で救われた命。松吉はどんな苦難にも歯を食いしばり耐え忍ぶ。そんな松吉を見守る周りの人たちの温かい心づかいが胸を打つ。特に、料理屋の嘉平・その娘真帆との触れ合いは印象的だ。けれど、そのふれあいも長くは続かなかった。大火が町を襲い、さまざまな人たちの運命を狂わせていく。松吉と真帆にも残酷な運命が待っていた。だが、松吉は負けなかった。おのれの信じる道をひたすらに突き進む。失敗を繰り返しながら、何年も何年も努力を重ねる。そして、ついにその努力が報われる日が来る!その描写は感動的だった。ラストでは、松吉の命を救った「銀二貫」の思いがけない行く末も見た。それにも深く感動した。
人は、ひとりでは生きられない。お互いがお互いを支えあって生きている。自分では気づかないところで支えられていることもある。人に情をかけたり、人を思いやる気持ち、それがどんなに大切なことかを改めて感じた。読後心にぬくもりを感じる、深い味わいのある作品だった。おススメです。

ゆこりん : 19:05 | 作者別・・た他