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2014年5月26日

最終退行(池井戸潤)


東京第一銀行羽田支店の副支店長・蓮沼は、支店を最後に出る「最終退行」の常連だった。彼は、不況に苦しむ中小企業と利益優先の銀行とのはざまで、日夜苦しんでいた。そんな状況の中、かつての頭取で今は会長の久遠の裏金問題が浮上する。8億円もの巨額な裏金の行方を追及していた蓮沼の前に、思いがけない罠が待っていた・・・。

貸しはがし、リストラ、そして会長の私服肥し。蓮沼に、次々に難題が降りかかる。自分の保身しか考えない支店長のせいで中小企業の社長が犠牲になる部分では、憤りを感じた。景気のいいときと悪いときとでは、銀行の対応は180度違う。銀行は、弱者を食い物にしてしまうのか・・・。また、リストラされた元行員の復讐劇に裏金が絡んでくる部分は、緊迫感や迫力があった。「悪を絶対に許さない!」そういう思いでどんな権力ーたとえそれが会長でもーにも立ち向かおうとする蓮沼の態度は潔い。会長を追い詰めていく描写は読んでいて小気味よかった。ラストも納得。楽しめる作品だと思う。

ゆこりん : 16:56 | 作者別・・いけいどじゅん