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2014年4月 9日

不祥事(池井戸潤)


伊丹百貨店の全従業員約9千人分の給与データが紛失した。伊丹百貨店には、赤坂の再開発を伴う数千億円のお金が動く巨大プロジェクトがあった。「もし今回の不祥事でわが東京第一銀行との関係にひびが入ったら・・・。」本部調査役の相馬とともに調査を開始した花咲舞を待っていたものは・・・。表題作を含む8編を収録。

短編集だが、連作のような構成になっている。相馬に「狂い咲き」と呼ばれている花咲舞。何をしでかすか分からないのでそう呼ばれているのだが、彼女は決してトラブルメーカーではない。悪や不正を絶対に許せないだけなのだ。この作品では、舞が籍を置く東京第一銀行の内情が描かれている。ゆがんだ人間関係、利益優先の体質、自分勝手な上司・・・。読んでいて腹の立つことばかりだ。特に「腐魚」の中に登場する伊丹は最低の人間だ。救いのあるラストでほっとしたが。中には「彼岸花」のような、悲哀を感じさせる話もあった。人間関係の醜さは、こんな悲劇をもたらすこともあるのだ・・・。「三番窓口」「荒磯の子」「過払い」なども読みごたえがある。誰に何と言われようとも、不正をただすために突き進む舞の行動は爽快だ。読後感も悪くなかった。面白い作品だと思う。

ゆこりん : 19:14 | 作者別・・いけいどじゅん