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2014年4月 8日

銀行総務特命(池井戸潤)


帝都銀行の顧客名簿が流出しているらしいとの情報がもたらされた。銀行の信用を揺るがしかねない大問題に、総務特命はどう対処するのか?「漏洩」を含む8編を収録。

やってはいけないことだと分かっていても、やらざるを得ない状況に追い込まれる。だれかが困ると分かっていても、あえて行動を起こす。自分自身を破滅させる行為だとしても、それに向かって突き進む。さまざまな人間の悲哀が色濃く描かれているが、そのことが読み手をぐいぐい惹きつける。救いはあるのか?ないのか?解決策は?読みながら様々な思いが心の中を駆け巡る。8編の中でいちばん印象に残ったのは「ペイオフの罠」だ。人が人を信じる時代は終わったのかと、暗澹たる気持ちになった。唯一の救いは、唐木怜の存在だったが・・・。
どの話も面白く結末が気になる話ばかりだったので、一気に読んでしまった。味わいのある作品だと思う。

ゆこりん : 20:20 | 作者別・・いけいどじゅん