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2014年4月 3日

おれに関する噂(筒井康隆)


ある日突然、ニュースで"おれ"のことが取り上げられた。日常生活のすべてがニュースとして放映される。平凡な人間に起こった珍事の結末は?表題作「おれに関する噂」を含む11編を収録。新潮文庫20世紀の100冊1974年。

「おれに関する噂」は、ひとりの平凡な男がある日突然ニュースに取り上げられる話だ。女性にふられたこと、病院へ行ったこと、ウナギを食べたこと、そして決して人には知られたくないことまで・・・。1974年に出版された作品だが、マスコミを痛烈に批判したこの話は現代でも充分に通用する面白さを持っている。「熊の木本線」は、民謡の歌詞を正しく歌ってしまった(絶対に正しい歌詞を歌ってはいけないことになっていた)男に起こった悲劇を描いている。ばかばかしいと思うような内容だが、なかなかの味わいを持っている。「心臓に悪い」も面白い。読んでいると、こちらまで胸が苦しくなってくるようだった。中にはアクの強い話もあったが、作者の独特の世界観を感じることができる興味深い作品だった。

ゆこりん : 21:14 | 作者別・・つ他