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2013年12月19日

華氏451度(レイ・ブラッドベリ)


モンターグは、世界で禁じられている「本」を見つけ出し焼き払う焚書官だった。何も考えることなく黙々と仕事をこなしていたが、あるとき本を手にしてから人生観が大きく変わり始めた。「何が正しいことなのか?」モンターグの行きつく先は・・・。

本を所持したり読んだりすることは重大な犯罪だ。人々は、ラジオやテレビから一方的に送られる情報のみを受け入れ、そのことに何の疑問も抱かずに生活していた。深く考えることもせず、知識の蓄積もない生活。本のない世界なんてまったく考えられないし、想像もできない。一方的な情報で自分たちの行動や考え方を決められてしまう世界。一部の権力者たちが情報を操作し、そして人を操作する。恐ろしい話だ。架空の話だとは分かっていても、どこか現実の世界につながる部分を感じて、読んでいてぞっとした。
自分で考え自分の意思で行動することに"目覚めた"モンターグたちの行く先には、いったいどんな未来があるというのか?楽観的になれないラストはつらいものがあった。

ゆこりん : 19:37 | 作者別・・れ