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2013年11月25日
軍神の血脈(高田崇史)
特攻隊の生き残りで今は歴史研究家の修吉は、南朝の大忠臣・楠正成に対し疑問を抱いていた。だが、その疑問が氷解したとき、修吉は何者かに毒を射たれ生命の危機に!毒の正体を突き止めなければ、修吉の命が終わる。孫娘の瑠璃は、高校時代の同級生だった京一郎とともに正成に隠された謎を追うことにしたのだが・・・。
700年近く前に壮絶な最期を遂げた楠正成。その彼の秘密が明かされようとしたときに事件は起こった。人を殺してまでも守らなければならないもの。それはいったいどんな真実なのか?修吉の命のタイムリミットが迫る中で、瑠璃と京一郎は真実を求め奔走する。数々の資料や文献の中から浮かび上がる楠正成という男の真の姿。だが、魔の手は瑠璃にも及ぶ・・・。
数々の言い伝えはあるが、そのどれもが正成という男を正確に伝えてはいないだろう。現代に生きる私たちは、さまざまな資料を突き合わせ考察し、推理するしかない。だが、700年前に生きた男がいったいどんな形で現代に影響を及ぼしているのか?それはとても興味深いことだった。徐々にではあるが、一般的に知られているのとは違う正成像が浮かび上がってくる。そして修吉の事件とつながっていくのだが、新たな真実との結びつき方はいまいち説得力に欠ける感じがした。少々強引なのではないかと思う。こんな理由ではたして、人の命を奪おうとするだろうか?どうも納得できない。本の帯に書かれた「日本版ダヴィンチ・コードだ。」という言葉にも非常に心を惹かれたが、「ダヴィンチ・コード」とはレベルが違うような気がする。ミステリーとしてではなく、ただ単に「異説 楠正成」として読むほうがいいかもしれない。