« 駅物語(朱野帰子) | メイン | 私と踊って(恩田陸) »

2013年11月14日

政と源(三浦しをん)


つまみ簪職人の源二郎には、元ヤンキーの弟子徹平がいた。その徹平が、昔の不良仲間にひどく殴られた。
「後継者を殴られるのは、職人の恥だ!」
源二郎は、幼なじみの国政とともに不良たちを懲らしめようとするが・・・。源と政、幼なじみのふたりが繰り広げる心温まる物語。

ずっと同じ町内に住んでいる幼なじみだが、性格は正反対のふたり。考え方や生き方も全く違う。普通ならつき合うことのないふたりだが、70歳を過ぎた今でも、親友としてつき合っている。どちらかが困ったときには、何をおいても駆けつける。お互いがお互いを思いやる心は、もしかしたら家族以上かもしれない。源二郎の弟子徹平の一大事のときも、ふたりで見事に不良たちを撃退した。妻に出て行かれた国政、妻に死なれた源二郎。毎日の暮らしの中で寂しさを感じることもあるだろうし、老いが身にしみることもあるだろう。でも、こんなに頼もしい友だちが近くにいたら、どんなにいいだろう。ふたりがうらやましい。
人間、生きていればいろいろなことがある。楽しいことよりつらいことや悲しいことの方が多いときもある。けれど、国政と源二郎のように、相手を思いやって生きることができるなら、こんなに素敵なことはない。
ユーモラスな内容だが、人生や老いの悲哀さを感じる部分もありホロリとさせられた。一方では、ほのぼのとしたぬくもりも感じさせてくれた。味わいのある作品だと思う。

ゆこりん : 20:33 | 作者別・・みうらしをん