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2013年9月24日

死神の浮力(伊坂幸太郎)


娘を殺された山野辺夫妻は、犯人に対し復讐することを決意していた。周到な準備がなされる中、夫妻の元をひとりの男が訪問する。
「大事な情報を持ってきたんだが、中に入れてくれないか」
それは、死神の千葉だった。山野辺夫妻と千葉の七日間を描いた作品。

「死神の精度」の千葉が帰って来た♪「可」か「見送り」か?千葉の七日後の判断が気にかかる。山野辺夫妻は、七日の間に復讐を果たさなければならない状況だ。だが、夫妻は千葉が死神だということも、期間が限られていることも知らない。そんな状況の中で思いは遂げられるのか?一方、山野辺夫妻の娘を殺した男本城の残虐性は、読んでいても腹立たしいかぎりだ。人の命をもてあそび、人が嘆き悲しむ姿を見て喜ぶ。こんな人間は絶対に許すことができない。山野辺夫妻の本城への復讐に関わることになった千葉。感情がまったくない千葉の言動はユーモラスな面もあるが、ときにはゾクリとするほどの冷たさを持つ。「千葉が少しでもいいから山野辺夫妻に対し同情してくれたなら。」死神にこんな期待をするのはやはり無理か?感情を持たない者が物事を判断するとこうなってしまうのか?ラストのまとめ方は、ちょっと意外だった。真実を知っているのは死神のみ・・・。個人的には山野辺夫妻にもう少し救いがほしかったと思う。読後はほろ苦さが残ったが、読んで楽しめる作品だと思う。

ゆこりん : 19:46 | 作者別・・いさかこうたろう