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2013年8月29日

たぶんねこ(畠中恵)


大川の河畔にある料理屋 河内屋に大勢の商人たちが集まっていた。一太郎を含む大店の跡取り息子三人が、皆に紹介された。おいしい料理にうまい酒。座がにぎやかになったとき、親分の大貞がこう言った。
「三人のうちで、一番稼ぐのは誰なんだろうな。」
このひと言が、思わぬ騒動を生むことになるのだが・・・。「跡取り三人」を含む7編を収録。しゃばけシリーズ12。

長崎屋の若だんな一太郎は、相変わらず体が弱い。けれど、「跡取り三人」の話の中では、自分の力でしっかり稼ぐことができた。その成長ぶりには目を見張るものがある。力仕事はできないが、鋭い洞察力や人とは違う発想を駆使しての行動は、読んでいてなかなか面白かった。仁吉が記憶喪失になってしまう「みどりのたま」もよかった。古松の切ない願いは叶うのか?このことも気になったが、仁吉の心に秘めた想いの今後の行方がとても気になって仕方がなかった。仁吉の想いはこれからどうなる!?成就する事はあるのか?ないのか?
どの話も、人の心に潜むものを興味深く描いている。笑いと切なさも絶妙なバランスだ。読後も心地よく、ほのぼのとした温もりが残る。
一太郎はどんどん成長している。このまま成長していつかお嫁さんをもらう日が来たら、妖たちとの関係はどうなるのか?今までと同じというわけにはいかないのでは?最近は、そんな心配もしてしまう。ともあれ、このシリーズがこれからもずっと続きますように・・・。

ゆこりん : 20:17 | 作者別・・はたけなかめぐみ