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2013年7月11日

泣き童子(宮部みゆき)


泣いて泣いて、泣き止まぬ子。実は、泣き止まないのには訳があった・・・。心の中に潜む悪がばれそうになったとき、人はいったい何をしでかすのか?人の心の闇を描いた表題作「泣き童子」を含む6編を収録。三島屋変調百物語3。

「怖いから見たくない。」「怖いけれど見てみたい。」人は誰でもふたつの心を持っている。この作品は、そんな人の心のはざまにするりと入り込んで来る。この6つの話を読むと、「人って本当にいろいろな思いを抱えて生きているのだなぁ。」と改めて感じさせられる。そういう良くも悪くもさまざまな思いに、作者は鋭い目を向ける。すべてを見透かすようなその眼力も、ある意味怖い(笑)。
「魂取の池」では愛する者の心を試そうとした者の悲劇を、「くりから御殿」では逝ってしまった者と遺された者の切なさを、「泣き童子」では心に巣食う悪がもたらす恐怖と悲惨さを、「小雪舞う日の怪談語り」では招かれた人たちが語る余韻が残る話を、「まぐる笛」では人の恨みの怖さを、「節気顔」ではあの世とこの世をつなぐ男の奇妙な体験を、描いている。どの話も個性的で、作者の独特の感性が光るものばかりだ。恐懼と悲哀が奏でる絶妙のハーモニー♪読めば読むほど宮部ワールドに引き込まれていく。読んでいる間は、本当に楽しかった。どんな結末が待っているのかと、ワクワクした。魅力の短編集!オススメです!

ゆこりん : 19:05 | 作者別・・みやべみゆき