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2013年6月 4日

天涯の船(玉岡かおる)


明治16年、アメリカ行きの船の中でひとりの少女の運命が変わった。
乗船していた下働きの少女は、その船で留学するはずだった酒井家の姫君・三佐緒の身代わりを命じられる。虐待のような厳しい躾の日々。逃げ場のない状況の中、ミサオは運命の人と出会った・・・。ひとりの女性の波乱に満ちた生涯を描いた作品。

酒井家の令嬢の身代わりに仕立て上げられ、ミサオは否応無しに時代の波に翻弄される。運命の人、光次郎・・・。けれど、想いを遂げられる日が来ることはなかった。彼女は、オーストラリア子爵家のマックスと結婚することになる。一方光次郎は実業家として成功し、再び彼女の前に姿を現す。ミサオの心は揺れた。だが、さまざまなしがらみが彼女を縛りつける。
彼女に次々と襲いかかる過酷な運命。ときには流され、ときには乗り越え、彼女はしだいに強くなっていった。運もあったかもしれないが、その運も彼女が懸命に生きてきたからこそのものだ。どんな状況になっても決して弱音を吐かず、真正面から立ち向かう彼女の姿には感動を覚えた。前半は本当に面白く、ぐいぐい引き込まれた。だが後半になると、ミサオと光次郎の安っぽいメロドラマのような感じになってしまった。少々興ざめといった感じでつまらない。自分の心のおもむくままに生きるということがこういうことだったのかと思うと、正直がっかりした。誰が傷つこうがまったくかまわないということなのか?壮大な物語だけに、失望感は大きいものがあった。後半にも感動がほしかった。読後、不満が残る作品だった。

ゆこりん : 20:20 | 作者別・・た他