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2013年5月 7日

流星雨(津村節子)


幕末から明治。この歴史の激しい流れに翻弄された藩があった。会津藩・・・。男たちだけではなく、女たちも過酷な運命にさらされる事になる。敗走の先には、いったい何が待ち受けているのだろうか?激動の時代を生き抜いたひとりの少女の物語。

歴史の流れが変わるときはいつも、多くの者たちが犠牲になる。何が正しくて何が間違っているのか、それは誰にも分からないことなのではないだろうか。人々は歴史の大きなうねりの中で、ただおのれを見失わないようにするだけで精一杯なのだ。あきもそのひとりだ。戦いで父や兄を失い、転封により過酷な土地への移住を余儀なくされる。食べ物もろくにない土地で生き延びなければならない。その生きざまは壮絶だ。もと会津藩の人たちは、人としてまともに扱ってはもらえない。新政府は、それほど会津が憎かったのか・・・。
「自決した方がよかったのでは?」
そう思いつめるほどひどい生活が続く。そして・・・。ようやくあきに一筋の光が当たる。貧しい生活からやっと抜け出すことができたときはほっとした。あきもこれで幸せな人生を送ることができると思った。だが、作者は意外な結末を用意していた!
真に迫る戦いの描写、会津の人たちの悲しみや苦悩、それらがとてもよく描かれている。会津の歴史を知ることができたのもよかった。印象に残る作品だった。

ゆこりん : 20:05 | 作者別・・つ他