« 和菓子のアン(坂木司) | メイン | 流星雨(津村節子) »

2013年5月 1日

六月の輝き(乾ルカ)


美耶と美奈子は幼なじみ。家が隣同士ということもあり、とても仲が良かった。だが、美耶の持つ「不思議な力」がふたりの関係に影を落とした。美耶の力は、本当に「奇跡の力」なのか?ふたりの少女を待ち受ける運命は・・・?

「病気の人間を治せる。」そう信じた人たちが美耶に救いを求めてきた。美奈子もそのひとりだった。だが、思わぬところからふたりの関係にひびが入る。関係を修復できないまま月日だけが流れ去る。心がすれ違ったふたり・・・。美耶の苦悩、美奈子の苦悩、それぞれの苦悩が痛みを伴って読み手に伝わってくる。生きるということは、残酷なほどつらいだけのときもある。けれど、美耶に問いたい。「これほどまで自分を追い詰める必要があったのか?なぜ、いつも自分自身のことより他人のことを優先したのか?」命を削るような美耶の行動には涙を誘われた。また、美耶と彼女の母との関係も、切ないものがあった。母と娘、もっと心が通い合ってもよかったのに・・・。
内容は重いが、読後はおだやかな感動を与えてくれる。余韻の残る作品だった。

ゆこりん : 19:31 | 作者別・・い他