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2013年4月30日

和菓子のアン(坂木司)


高校卒業後の進路も、やりたいことが見つからず特に決めていなかった。自分の容姿にも自信が持てず、毎日をなんとなく過ごしていた。そんな梅本杏子が、デパートの地下にある和菓子屋さんで働くことになった。そこで起こるできごととは・・・。和菓子をめぐる5つのミステリーを収録。

18歳の梅本杏子は、みんなから「アンちゃん」と呼ばれかわいがられている。和菓子を買いに来るのは、実にさまざまな人だ。椿店長は、私生活はユニークだが、和菓子の知識は抜群!どんなものを買い求めるかで、客の置かれている状況や心情を見抜き、和菓子にまつわる謎をあっという間に解いてしまう。その鋭い洞察力には、杏子もびっくり!
和菓子というのは奥が深いものだと、この作品を読んで初めて知った。和菓子に込められた作り手の思いには、正直頭が下がる。そして、和菓子を本当に好きな人は、その思いをちゃんと分かっていて季節や状況に応じてそれにふさわしいものを買っていくのだ。実は、私は甘いもの、特に和菓子が苦手だ。そんな私が、この作品に出てくる和菓子を味見したいと思ってしまった。そのくらい、作者の和菓子の描写は実に見事だ。登場人物も個性的で、魅力的だった。そして、和菓子をめぐる5つの話は、どれも面白かった。読後も充分満足感を味わえた。和菓子を好きな人も、そうでない人も、楽しく読める作品だと思う。

ゆこりん : 20:23 | 作者別・・さ他