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2013年1月11日
ゴルディアスの結び目(小松左京)
かつて「部屋」だったものは、今や直径25センチの球体になってしまった。しかもそれは、さらに縮み続けている。誰にも止めることはできない。この中には、ふたりの人間がいたのだが・・・。そのふたり、少女マリアと伊藤にいったい何が起きたのか?表題作「ゴルディアスの結び目」を含む4編を収録。
日常生活に繋がる非日常。人間の営みと宇宙の関係。そして宇宙の真理。作中の登場人物が滔々と語るそれらは、神秘的で不思議な魅力に満ちている。この作品の中の4編すべてが、驚きの発想で描かれている。一歩間違えば突飛な発想になってしまうかもしれないが、作者は実に巧みに、興味深く面白い話に仕上げている。4編の中で印象に残ったのは、表題作の「ゴルディアスの結び目」だ。少女の心の中に異空間が存在し、それが宇宙と繋がっているという設定は驚きだ。作者は、広い視野で人間や宇宙をとらえている。日常のささいなことで悩んでいる自分が、ちっぽけな存在に思えてしまう。
1977年に出版された作品だが、今でも充分に通用する内容だと思う。理解しがたいところも少なからずあったが、小松左京をより知ることができ、読んでよかったと思っている。