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2012年11月14日

鍵のない夢を見る(辻村深月)


「りっちゃんだ・・・。」観光バスに乗ったミチルは、バスツアーガイドが小学校時代の同級生の律子だと知って驚く。ミチルの心に、鮮やかに当時の思い出がよみがえる。その思い出は、ちょっぴりほろ苦いものだった。「仁志野町の泥棒」を含む5編を収録。直木賞受賞作品。

「仁志野町の泥棒」は、ミチルと律子の小学校時代の話だ。思い出すと胸が痛むできごとがあった。だが、それが遠い昔のできごとになってしまったということを、とても印象的に描写している。小学生の女の子たちの様子もよく描かれていたと思う。作者の独特の感性を感じる話だ。ほかの4つの話は、どれも、読んでいて閉塞感を感じた。どんなにあがいても逃げ場がない。暗い穴の中、地面に這いつくばりもがいている、堕ちるだけ堕ちた主人公の姿が見えるようだった。本の帯には「岐路に立つ、5人の女たち」とあるが、はたして彼女たちは本当に岐路に立っているのだろうか?どの方向に進んでも救いがないように思える。読後感もよくなかった。気持ちが落ち込んでいくようで、後味がとても悪い。私には合わない作品だった。

ゆこりん : 19:59 | 作者別・・つじむらみづき