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2012年9月11日
鬼(今邑彩)
かくれんぼの鬼になったまま、古井戸に落ちて死んだみっちゃん。そのみっちゃんが、7歳のときの姿のままでもとの遊び仲間の前に現れた。かくれんぼはまだ続いていたのだ!みっちゃんに見つかった者たちを待っていたのは・・・。表題作「鬼」を含む10編を収録。
この作品に登場する人たちは、どこにでもいそうな人たちばかりだ。平凡な日常生活を送っている。だが、そんな人たちにも突然恐怖が襲いかかる。そこから逃れようとすればするほど、ますます恐怖に絡め取られていく。読んでいると、一歩間違えば誰もがそうなってしまうかもしれないと思わされる。本当にぞっとした。恐怖はあちこちに潜んでいるのだ。平凡な家庭の片隅に、幸せそうな笑顔の陰に、そして温かな心の裏側に。できればそれに気づかずに、おだやかに毎日を過ごしたいものだ。
じわじわと足元を這い上がってくるような恐怖と考え抜かれたラストが、絶妙のストーリーを作り上げている。どの話も面白いと思った。でも、決して夜にひとりで読まないように。振り返ることができなくなるかもしれない。恐怖が背後から・・・。
ゆこりん : 17:47 | 作者別・・いまむらあや