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2012年9月 3日

アナザーフェイス(堂場瞬一)


首都銀行に勤める男の息子が誘拐された!妻が亡くなり、息子を自分ひとりで育てていくために捜査一課から総務課に移動していた大友は、元上司の福原から、事件の捜査に加わり大友の持つ能力を生かすよう指示される。刑事として父親として、彼の成すべきことはいったい何か?大友の奮闘が始まる・・・。

刑事といえば硬派なイメージが強いが、この作品に登場する大友はちょっと違う。刑事というよりひとりの父親という感じが強い。大友は、学生時代に芝居を通して身につけた能力を遺憾なく発揮し、事件解決に向け奔走する。動機は何か?犯人はいったい何者なのか?巧妙な身代金受け渡しの描写は、手に汗握る緊迫したものだった。また、ショックで心を閉ざした者に向ける大友の優しいまなざしが印象的だった。ゆっくりとていねいに時間をかけ、相手を傷つけることなく心を開かせていく。その過程も読み応えがあった。幼い息子を抱えながら刑事を続けていくのは大変なことだと思う。大友はどう乗り切っていくのか?次回作も期待したい。読みやすく、楽しめる作品だと思う。

ゆこりん : 20:32 | 作者別・・どうばしゅんいち