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2012年6月20日

オーダーメイド殺人クラブ(辻村深月)


学校生活での友だちとのトラブルや母親への絶望感が、アンにひとつのことを決心させる。「私を殺して!」クラスメートの徳川に、アンは自分殺しを依頼したのだが・・・。

学校生活や自分の母親に絶望を感じたアンが取った行動は、突飛なものだ。けれど、アンの年齢を考えると、そういうこともありなのかな~とちょっと納得してしまう。昆虫系と称される徳川とふたりで練る殺人計画は、当人たちは大真面目なのだが、大人の目から見ればちょっと滑稽なものに思える。
この作品では、アンの心理描写はとてもていねいだ。けれど徳川は、何気ないしぐさや目の動きなどでその心理を知ることはできるが、控えめに描かれている。アンから自分を殺すように頼まれた徳川が、いったい本当のところ何を考えているのは分からない。しかし、ラストで作者は、今まで抑えてきた分徳川の思いを実に見事に印象的に描いている。「徳川ってこういう人だったんだ!」彼の秘められた思いにちょっと感激した。タイトルは物騒だけれど、読後はさわやかな感動を与えてくれる作品だと思う。

ゆこりん : 19:13 | 作者別・・つじむらみづき