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2012年6月22日

ツリーハウス(角田光代)


祖父の突然の死をきっかけに、良嗣は自分の家族のことを考え始める。祖父の戸籍に載っている良嗣が知らない名前・・・。そして、過去を語りたがらない祖母。祖父や祖母の過去にはいったいどんなできごとがあったのか?

祖父も祖母も決して過去を語らなかった。だが、祖父の死をきっかけに、祖母ヤエは過去を振り返る旅に出る・・・。
藤代泰造と田中ヤエは、戦時中の満州で出会った。だがそこは安住の地ではなかった。敗戦とともに命からがら日本に戻ったふたりは、生きるために必死に働く。子供が生まれた。自分たちの店を持った。そして、幸せも不幸もたくさん味わった。泰造やヤエは、なぜ過去を語らなかったのか?いや、ふたりは語らなかったのではない。語れなかったのだ。いったいどんな言葉で、思い出すのもつらいこの壮絶な体験を語れるというのだろう。戦争、終戦、そして昭和から平成の現代へと移り変わる中での親子三代にわたる物語は、実に壮大だ。
家族には家族の歴史がある。過去から現代、ずっとつながった家族の絆。そこに自分もいる。この作品を読むと、その当たり前のことに新鮮な感動を覚える。作者の熱い思いが込められた、読み応え充分の面白い作品だった。

ゆこりん : 16:20 | 作者別・・かくたみつよ