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2012年3月19日

地のはてから(乃南アサ)


父作四郎に連れられ、とわは母つねと兄直一とともに、夜逃げ同然で福島から北海道に渡った。そこで待っていたのは、過酷な環境だった。冬の寒さに耐え、登野原一家は北海道で必死に生きていこうとするのだが・・・。

登野原一家が北海道に来た大正の初めは、私の祖父がやはり福島から北海道に来た頃でもあった。その当時の苦労話を、祖父母から聞いたことがある。北海道の自然は過酷だ。人間に容赦なしだ。働いても働いても報われることなく、力尽き斃れていく人たちもいたと聞く。登野原一家も大変な苦労をして生き抜いていくのだが、読んでいて自然の過酷さが伝わってこない。「開墾の記」という、坂本直行さん(直行の祖父直寛は、坂本竜馬の甥)が実体験を書いた本があるが、それを読むと開拓の苦労がぐっと迫ってくる。リアルだ。だが、作者の描く自然の過酷さは、想像の域を脱していない。北海道に生まれ育った者としては、描写が物足りなく感じる。もし作者が実際に北海道の過酷な自然・・・特に冬の厳寒期を体験してこの作品を描いたのなら、もっと違った描写になり、とわの半生記はより感動的なものになったのではないか。作者の情熱が伝わってくる面白い作品だと思うだけに、とても残念な気がした。

ゆこりん : 19:11 | 作者別・・のなみあさ