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2012年2月29日
完全なる首長竜の日(乾緑郎)
自殺未遂を起こし意識不明の状態がもう何年も続いている弟浩市。姉の淳美は自殺の理由が知りたくて、開発された医療器具「SCインターフェイス」で浩市とのコンタクトを試みる。だが、そんな淳美の周辺で不可解なことが起こり始める・・・。第9回「このミステリーがすごい!」大賞受賞作品。
自分が触れていると思っているものや見えていると思っているものは、果たしてそこに「存在」するのか?いや、「存在」という定義すら疑わしいものに思えてくる。いったい自分自身の何を信じればいいのか?「現実と仮想」、「生と死」、「肉体と精神」、それらのものが入り混じり、読んでいるうちに何が「本当」なのかがよく分からなくなってしまった。ごちゃごちゃし過ぎている。
また、読み始めの段階で、どういう設定なのかが分かってしまった。こういう類の話は以前にも読んだことがあり、決して目新しいものではない。それでも、どういうふうに話を展開させるのか期待しながら読んだのだが、新鮮な感動を感じることはできなかった。ラストも消化不良。この作品で作者が読み手に伝えたかったことは何か?それも見えず、物足りないもやもやとした思いだけが読後に残った。