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2012年2月23日

オー!ファーザー(伊坂幸太郎)


母親1人に父親4人!ほかから見ればびっくり仰天の環境の中で育った由紀夫は、ごく普通の高校生だった。だが、好むと好まざるとに関わらず、彼の周辺ではおかしな事件が起きる。やがてその事件は大きな渦となり、由紀夫を襲うことになるのだが・・・。

軽妙洒脱な描写は、本当に伊坂幸太郎らしい。読んでいてワクワクする。父親が4人という異常(?)な状況。それすらも「いいなぁ」と思ってしまう。4人の父親は、それぞれ愛情表現は違うが由紀夫を心の底から愛している。息子と父親たちの間には、絶対的な信頼関係がある。だからこそ、さまざまなおかしな事件が起こっても、由紀夫は安心して自分の思うがままに行動できるのではないだろうか。後半の由紀夫が巻き込まれた事件に対する父親たちの行動はお見事!その光景が目に浮かぶようだ。作品のあちこちに散らばっている伏線がきれいに収束していくさまも、作者ならではのテクニックだ。ラストに漂う哀愁も、余韻を残していてよかった。最初から最後まで、楽しみながら読める作品だと思う。

ゆこりん : 19:45 | 作者別・・いさかこうたろう