« 果しなき流れの果に(小松左京) | メイン | エデン(近藤史恵) »

2012年2月 7日

御宿かわせみ(平岩弓枝)


大川端町豊海橋のたもとから少しはずれたところに「かわせみ」はあった。そこの女主人るいと、恋人神林東吾を軸に、「かわせみ」を利用する人たちに起こるさまざまな事件を描いた作品。シリーズ1作目。

江戸の世に暮らす庶民の生活が生き生きと描かれていて、心地よく読むことができる。「かわせみ」には、実にさまざまな人が投宿する。なので、起こる事件もさまざまだ。だが、すっきり解決する事件ばかりではない。中には、「初春の客」のように胸を締めつけられるような結末の話もある。
生きるということは楽しいことばかりではない。つらいこと苦しいこともたくさんある。世の中、理不尽なことも多い。この作品の中にもそういうことが描かれている。だが、「人情」の存在が、やりきれなくなる気持ちに救いを与えてくれる。人が人を思いやる心を忘れない限り、希望を持ち未来に向って歩き続けられるのではないだろうか。作者の想いがしっかりと詰まっている温かみのある作品で、読後感も悪くなかった。読み応えのあるいい作品だと思う。

ゆこりん : 20:02 | 作者別・・ひらいわゆみえ