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2011年12月21日

虚ろ舟(泣きの銀次参乃章)(宇江佐真理)


大店の息子でありながら勘当された者たち。彼らは読売り(瓦版)で生計をたてていたのだが、銀次の口利きで何人かが家に帰ることを決心した。だが、思いがけない悲劇が起こる。彼らを待たせすぎたことが原因だと、銀次は後悔するが・・・。泣きの銀次シリーズ3。

親子、兄弟、男と女。人と人との関わり方はいろいろあるが、そこには楽しいことばかりがあるわけではない。悲しみや苦しみに満ちているときもある。厳しい現実、そして人生。それに立ち向かうだけの勇気や度胸があるのか?いや、勇気や度胸を持たなければならないのだ。そうしなければ、おのれでおのれを潰してしまうかもしれない・・・。銀次の娘お次も、それを強く感じただろう。このシリーズ3では、シリーズ2からさらに年月がたっている。銀次も50歳になろうとしている。けれど、人生の悲哀はいつの世も無くなることはない。岡っ引きとして、夫として、そして父親として、銀次は泣く。その人間味あふれる姿は、読み手の心を強く揺さぶる。銀次には、これからもまだまだ活躍してほしい。余韻が残る、しっとりとした味わいのある作品だった。

ゆこりん : 19:25 | 作者別・・うえざまり