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2011年12月11日

おまえさん(宮部みゆき)


人気の痒み止めの薬「王珍膏」を扱う瓶屋のあるじ新兵衛が殺された。その斬り口は、少し前に殺された身元不明の男のものと同じだった。ふたりのつながりをたどるうちに、封印されていたはずの過去のできごとがしだいに浮かび上がってきた・・・。ぼんくらシリーズ第3弾!

よくこれだけたくさんの人を登場させたものだと感心する。単行本には付録として人物相関図がついていたので、本当に助かった。
身元不明の男の事件と瓶屋のあるじの事件。複雑な人間関係やすれ違う人の心が、これらの事件を引き起こしたのかもしれない。その辺の事情を、作者は巧みに描いている。人は、相手を思いやる温かい心を持っている。だがそれと同時に、人は心の中に暗く冷たい闇も抱えている。闇が心を支配したときに、人は鬼になる・・・。
かなりボリュームのある作品だが、作者はよくまとめたと思う。構成力は抜群!それに描写も巧みで、読んでいると自分も登場人物のひとりとしてこの作品の中に入り込んでしまったような錯覚に襲われる。また、たくさんの登場人物のひとりひとりがとてもていねいに、そして個性的に描かれていて、しぐさ、表情、動作などがリアルに浮かび上がってくる。弓之助、三太郎、平四郎、間島信之輔、お徳、政五郎・・・どの人物も、本当に魅力的だ。話の展開の仕方もよかった。ラストへの収束の仕方もお見事!面白く、ほろ苦く、そして切なく。読後も満足感が残る、すばらしい作品だった。

ゆこりん : 14:32 | 作者別・・みやべみゆき