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2011年12月12日
鉄の骨(池井戸潤)
中堅ゼネコン一松組に入社して3年。平太は突然、現場から業務課への移動を命じられる。納得できないまま業務課に移った平太は、そこで今までまったく知らなかった会社の別の面を見ることになる。「談合は犯罪だ!」次第にそう叫べなくなっていく平太だったが・・・。
受注された仕事をするのが現場だ。だが、仕事を取るためにどれだけ営業の人間が苦労しているのか!そのことを、平太は身を持って知ることになる。正攻法では決して仕事は取れない。だが、だからといって「談合」という犯罪に手を貸すのか?平太の心は揺れ動く。捜査の手が伸びる中、地下鉄工事の入札の日が来る。いったいどこの会社が落札するのか?そこに犯罪性はあるのか?息詰まる展開に目が離せない。
実社会でも談合が問題になっている。どんなに対策を講じようと、それは決して無くならない。不正と知りつつも、犯罪だと自覚しつつも、生き残るために談合をしようとする企業が後を絶たない。厳しい競争を勝ち抜くためには談合が必要なのだという、企業側の悲痛な叫びが聞こえてくるようだ。
「はたして、作者はこの作品のラストをどう描くのか?」最後はそこだった。結末をどう描くかで、この作品の評価がかなり違ってくると感じたからだ。もっと劇的なものを想像していたのだが、作者は無難にまとめてしまった。少々物足りなさも感じないではないが、多くの読み手を納得させられるラストなのかもしれない。全体的には面白いと思う。単行本で500ページちょっとの長さだが、一気読みだった。
ゆこりん : 23:25 | 作者別・・いけいどじゅん